不定期記事「探索者」

作成日:2008/12/12
最終更新日: 2009/03/05
作成者:しんどうまさゆき

ホーム > 不定期記事「探索者」 >

車両置き換えの噂が過去十数年、一向にでてこないJR久留里線について、私なりの車両置き換えの仮説をまとめておきたい。
(注1、当記事は筆者による予測であり、JR東日本の公式発表ではありません。 また、鉄道の運用は刻々と変化するものであり、当文書及びリンク先の情報が、 最新の状況を常に反映している保証はありません。 当文書およびリンク先での情報を利用したことにより、 何らかの損害を被ったとしても、筆者は一切の責任を負いません。
注2、以下では鉄道車両の形式等の専門用語が出てきます(例、キハ30系)。 用語の詳細についてはWikipediaに詳しく説明されていますのでご参照ください。

wikipedia

<久留里線用車両の現状>
久留里線用車両の種類・車両数について他サイトを探してみたものの、 情報に一覧性がないので、自作してみた。

気動車編成表・幕張車両センター木更津派出

キハ30は極端に古い車両なので、早急に置き換えるべきだ。 キハ37、38はJR東日本の気動車全体と比較して、古すぎる車両とは言えない。 しかし、更新工事を施すほど現代的な車両でもない。 (補足、2008年現在、JR東日本の気動車で最も古いのはキハ40系の車両で、1977-1982製造(26-31年経過)だ))

<概略−新車を投入する理由>
新車投入の理由は、房総各線、京葉線の場合と共通になる。

【新車投入の理由】 (省エネ対応、バリアフリー対応の詳細については 「探索者 2008/11/06」に詳しいのでご参照頂きたい)

<車両置き換えに対する制約とその解決>
車両置き換えをしようとする場合、制約があるので以下に説明する。

久留里線の車両をやたらと統一することはできない。 車両充当計画(車両の運用サイクル)は実質5パターンで、比較的単純なようだが、 観光イベント等で乗客数にムラがあり、車両の編成長が 2、3、4両とまちまちになる。そのため、両運転台車を数両用意して、 3両編成を作れる体制が必要だ。

(補足、車両充当計画・・・ 鉄道車両は定期的に検査を受ける必要がある(交番検査等)。 これを実現するため、鉄道車両の1日の全運用は10程度-数十程度のパターンに分割される。 車両は日々、順を追うようにパターンをこなし、全てのパターンを こなしたら最初のパターンに戻って1サイクルするようになっている。 なお、1サイクルのうち数回は車庫に戻るように計画される。 これによって、営業運用からいったん外れ、 工場(久留里車両の場合、郡山総合車両センター)へ検査を受けに行く余裕が作れる)

(備考、久留里線の車両充当計画については以下の情報が参考になる。

久留里線運用(「千葉総合車両センター」内記事)

この他、通学ラッシュが激しいため、久留里線では3扉車を多く使用している。 気動車の多くは2扉車なので、旧車を使うことは難しいと筆者は考える。

<置き換え予測>
以下に、旧車量を新車両に置き換える予定を予測してみた。
(注1、時刻表(特定の駅の発車時刻表ではなく、書籍の時刻表)をお求めになり、 置き換えされる運用番号に乗っている列車番号(926D、929Dなどの番号)を 探してマーカー等で色つけをすると、置き換えされる列車が何時何分に走るのか、 直感的に分かりやすく見えてきます。 当文書を読むだけでは普通イメージが湧きませんので、この作業をお薦め致します)

<置き換え対象>
キハ30(両運転台車)3両
→キハE130(両運転台車)3両

キハ37(片運転台車)3両
キハ38(片運転台車)7両
→キハE131+キハE132(片運転台車)1+1両×5編成

<運用の変化>
5運用のサイクルを2両編成 5本、単行3両で回転させる。 (キハE131+132 1本、またはキハE130 2両 1本のいずれかを2両編成の予備車にあてはめる。 また、旅客の変動に対応して3両編成を作るため、キハE130 1両を予備車とする)

<JR東日本の気動車の全貌>
久留里線の車両置き換えが何年何月のことになるかは見当をつけにくい。 しかし、2009-2015年の間に置き換えの動きがあるだろう。 これは、JR東日本の気動車の動向を全体的に眺めてみて、 相当に大雑把ながら推測できる。 2008年現在、JR東日本に在籍する気動車には以下がある。

JR東日本で営業運用に就いている気動車の種別

キハ40系の在籍状況(JR東日本)

最も古いのはキハ40、47、48だ(なお、3形式をまとめてキハ40系と言う)。 キハ40系はJR東日本の各車両センターに多数在籍している。 一部列車は観光列車としてリニューアル改造しているが (例、五能線の「リゾートしらかみ」、八戸−大湊間を走る「きらきらみちのく」、 仙台−小牛田間を走る「みのり」)、 基本設計が古いので、新車の投入は不可避だと考える。

<仮説・キハ40系の置き換え>
仮にキハ40系を全車両、キハE130系やキハE120で置き換えるならば、 9年の期間(2009-2016年)が必要だろう。 キハE120、キハE130系を生産する「新潟トランシス」での気動車の生産実績は、 2006年にキハE130系を24両、2007年にキハE130系を15両、 2008年にキハE120を8両となっている。キハ40系の在籍数は180両なので、 1年あたり20両を生産して全て置き換えると仮定して、9年かかる計算だ。
(キハ40系に余剰となった留置車がいくらあるか、 また、ダイヤの見直しで運行が削減されるかどうかについては、資料を集められなかった。 そのため、置き換え不要な車両数は今回考慮していない。 他にも、JR東日本はハイブリッド気動車のキハE200を新造し(製造は東急車輌)、 小海線で営業運用している。 キハE200でキハ40系を一部置き換える可能性がゼロではないが、 本稿ではあえて考慮していない)

置き換えは、新津運輸区から始まっている。 新津にはキハ40系よりも古い形式のキハ58が若干残っており、 これを置き換えるため、2008年にキハE120を投入した。 2009年も引き続きキハE120の使用機会を増やすことによって、 キハ40系を一部置き換える見込みだ。 今後も、新津運輸区にキハE120を集中投入して、キハ40系を 置き換えるのではないかと筆者は予想している。

JR東日本キハE120形気動車(Wikipedia)

米坂線・磐越西線等に新型気動車を導入します:JR東日本新潟支社 2008年4月16日付リリース

キハ40系の置き換え順を予想してみる。

新津運輸区(2009-2011年、キハE120 39両。新潟地区はSuicaが導入済。 乗客数が多い等の理由で、新車両の投入を優先的に行いたいのではないか)

→幕張車両センター木更津派出(2010年、キハE130系 13両。 非常に古いキハ30や、少数形式のキハ37、キハ38を抱えているため、 保守の簡単化のために水郡線と同一形式を使うのではないか)

→宇都宮運転所(2011年、キハE120 8両。 車両数が少ないため、置き換えが簡単。そのため早期に置き換え)

→郡山総合車両センター(2012-2013年、キハE120 18両。 キハ40が未更新車であることと、車両数が少ないため早期に置き換え)

→八戸運輸区(2012-2013年、キハE120 38両。2010年の東北新幹線延伸に伴い、 東北本線 八戸−青森間を青い森鉄道へ移管するため、線路の使用料等の権利問題が 解決してから、運用を見直した上での置き換えになりそう。 気動車使用路線は津軽線、大湊線、八戸線で、 八戸運輸区へ戻るには八戸線以外、青い森鉄道を経由することになる)

→小牛田運輸区(2014-2015年、キハE120 25両。 石巻線は割合短距離。気仙沼線は長距離ながら運行本数が少ない。 おそらく運用が単純なので、秋田よりは先に置き換えそう)

→秋田車両センター(2014-2016年、52両。 短距離の男鹿線には長大編成が走る。こちらを優先的に置き換えそう。 五能線は非常に長距離で、全区間を通す列車はほとんどない)

<キハE120、E130系で間に合うのか>
仮説の置き換え最終年である9年目には、 キハ40系の経年が35-40年になる。 また、キハ100系、キハ110系の経年は27年になる。 JR東日本の最近の車両投入方針や、バリアフリー対応のスピードを考えると、 ここまで経年を長く引っ張るとは考えにくい。 現実には、新潟トランシスの設備を増強して増産するか、 キハE200を量産して、新車両を気動車とハイブリッド車の2本立て体制にするなどして、 仮説の半分となる4-5年で終わらせると筆者は考える。 (備考、キハE200が最初に投入された小海線は、急勾配(山岳路線)、寒冷地、長距離の 三拍子が揃った、列車に負荷が高い路線だ。 JR東日本はこの列車の信頼性を検証して、 東北地区へ本格的に投入するつもりだと筆者は考える)

<その後の状況>
久留里線の気動車の置き換え予定について、内部情報が出てきた。

久留里線、2012年度に気動車を置き換え(日刊動労千葉 No.6763、2009/02/16)

JR東日本、ディーゼル車両の4割をハイブリッド型に(Nikkei net 2009/02/23 記事)

2012年度に、キハE130、キハE200のどちらかで置き換えとなるようだ。

<更に未来の話>
更に未来の話としては、 キハE200の次世代車となるであろう、燃料電池ハイブリッド車を開発中だ。

環境にやさしい車両(NEトレイン)(JR東日本)

これは直流電化区間と交流電化区間をまたがる運用で便利になりそうだ。 現状では、交直流電車または気動車を使用している。 交直流電車は製造コストが高いため、燃料電池ハイブリッド車で代替するかもしれない。 将来的には、直流電車、交流電車、交直流電車、気動車を廃止し、燃料電池ハイブリッド車に統一する可能性がある。

キハE200や燃料電池ハイブリッド車を含めて予想すると、 将来像の可能性があまりにも多くなり、予想の意味がなくなる。 そのため、本稿執筆時点ではあえて触れない。

<編集後記>
久留里線はひなびた車両と路線風景で鉄道マニア(特に写真撮影趣味の方)に好評の路線だ (久留里以南は「山深い秘境を走る」と言ってもいい。国道410号線が久留里線の俵田−上総松丘間と 並行しているので、車で通るとその感覚はいや増す)。 最近2、3年、観光用に臨時列車が設定されている(びゅうコースター風っこなど)。 新型車を採用する場合、内外装の風情を工夫してもらえると面白いが、 どこまでやってくれるだろうか。栃木県の烏山線では駅の数にちなんで、 七福神のイラストを駅の看板や車両のイラストマークに載せるなどしている。 こういった遊び心は他線区にもあってよい。