お薦めの本

最終更新日: 2008/10/27
作成者:しんどうまさゆき

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(藤沢晃治著、講談社ブルーバックス刊)

マニュアルライターやテクニカルライターと呼ばれる、分かりやすい文章を書く専門家が 散文のルールを解説する指南書。「『分かりやすい表現』の技術」では、 街で見かける分かりにくい文章と、その改善案などを出して表現のノウハウを教える。 マニュアルライター志望者は必読。書評は以下をご覧ください。

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「『分かりやすい説明』の技術」では、プレゼンテーションなどの 説明を分かりやすくするノウハウや、説明が分かるとはどういうことか という原理を解説している。具体的なノウハウとして、 15項目の説明術が紹介されている。 読んでみると「当たり前のことばかりじゃないか」と思われるだろう。 しかし、初心が不徹底になり、低品質な説明になってしまうことが多い。 特に、ルール12の「『繰り返しの劣化』に注意せよ」は、誰もが陥る罠だ。

ある地方都市の市営バスに乗った時のことです。 停留所でバスを発進させる直前に、運転士が毎回、 ウニャウニャと何やら車内アナウンスで言うのです。 私はその度に耳をそばだてていたのですが、 どう神経を集中しても、何を言っているのかが聞き取れません。

(中略)「(危ないので)吊り革におつかまりください」と 言っているのだそうです。しかも、方言を使っているわけではなく、 言い方がぞんざいになっているだけ、とも教えてくれました。

(中略)運転士は同じセリフを一日に数十回、一年で何千回も言っているうちに、 やがて、そのセリフに言い慣れ過ぎてしまったのでしょう。 そのうちに「言葉を話す」という感覚からも遠くなり、 さらに、乗客にある意図を伝えるという目的意識も、 遠い彼方に置き忘れてしまったのでしょう。そしてただただ、 条件反射のようにウニャウニャと不明瞭な音声を発するだけに なってしまったのだろうと思います。

ところがこのウニャウニャは、私たちも十分犯す恐れのあるミスなのです。 特に業務上で同じ説明を繰り返さなければならない状況で起こりがちなミスです。

(中略)お客様からの電話に出るときの、最初の「ハイ、○○でございます」 も毎回同じでしょう。とくに「○○」が会社名の短縮形だったりする場合を 考えてください。当然、応答している社員自身には、その「○○」は なじみがあるので理解できています。しかし、その会社に初めて電話している お客様にとっては、ゆっくり言ってもらわないと聞き取れない可能性があります。

かく言う私自身も、同じプレゼンテーションを繰り返していると、 回数を重ねるほど、受講生の満足度が低くなるという失敗を体験しました。

お客様に「えっ?」と聞き返されたら、自分の話し方がウニャウニャに なっている可能性を疑ってみるべきでしょう。(pp.134-136)

私は就職面接の予約を電話でとったことが数十回ある。 その中には、上のような「ウニャウニャ」の応対挨拶もあったし、 挨拶が途中から聞こえてくることもあった。受話器を上げながら 話しているためだろう。返事を速くしたいため、焦って失敗しているのではないか。 受話器をとって、耳にあてて、1秒待ってから話してほしい。 逆に、電話をかけるときは受話器を構えているので、割合話が通じる。 しかし、受け手が受話器を手元に持ってきたかどうかは、 テレビ電話でもなければ確認できない。かける側は必ず「もしもし」 と言う(1秒待つのと同じになる)ことが必要だ。 こうやって言うと、細々としたことでばかばかしいと感じるかもしれない。 しかし、よい説明は、細々とした技術を組み合わせて構成されている。 原理・原則を守って、繊細な技術である説明術をマスターしてほしい。

なお、教師が子どもにする説明のノウハウは、これだけでは不十分だ。 「どんな子だって勉強できる子になれる!」 「向山式『勉強のコツ』がよくわかる本」 などに載っているが「説明はなるべくしない」 「説明は5秒ですませよ。長くても30秒以上かけるな」 などの特殊なノウハウがある。教師・教育担当者用の説明術は、 向山要一シリーズをお読みいただきたい。


「『分かりやすい文章』の技術」では、意見、情報、研究成果などを 伝達、発表する実務文のルールを解説する。実務文は「同意を求める文章」 「同意を求めない文章」に分けられる。そのため「意図の正しい伝達」だけで よい文章と「説得での成功」も必要になる文章がある。 以上のような分析をした上で、文章そのものの工夫や、 文章を見やすくする工夫(行を空ける、見出しをつけるなど)を解説している。