不定期記事「探索者」

作成日:2008/11/17
最終更新日: 2009/09/03
作成者:しんどうまさゆき

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鉄道趣味の個人サイト等で、2008年に入ってからJR京葉線用の車両置き換えが噂されている。車両置き換えについて、私の仮説をまとめておきたい。
(注1、当記事は筆者による予測であり、JR東日本の公式発表ではありません。また、鉄道の運用は刻々と変化するものであり、当文書及びリンク先の情報が、 最新の状況を常に反映している保証はありません。当文書およびリンク先での情報を利用したことにより、何らかの損害を被ったとしても、筆者は一切の責任を負いません)

(注2、以下では鉄道車両の形式等の専門用語が出てきます(例、205系 量産先行車)。用語の詳細についてはWikipediaに詳しく説明されていますのでご参照ください。

wikipedia

<置き換えの噂>
【JR東】209系ケヨ33編成試運転(「1st-train」中記事)

上記記事にあるように、京浜東北線で使われていた209系500番台が、京葉線に転属してきた。これは京葉線の旧車量が置き換えられる予兆といえる。

非公式情報だが、下記ウェブサイトのように「京葉線にE233系が入って旧車量を全て置き換える」との予想もある。

国電総研スペシャル2008
(リンク先サイトにある京葉線への新車投入の情報は、JR東日本の公式発表ではありません)


国電総研スペシャル2009
(リンク先サイトにある京葉線への新車投入の情報は、JR東日本の公式発表ではありません)


一方、JR東日本では以下の経営計画を発表している。

「グループ経営ビジョン2020−挑むー」pp.14
2008年4月1日 東日本旅客鉄道株式会社


武蔵野線、京葉線、南武線、横浜線を「東京メガループ」と位置づけ、「私鉄との接続で大事な役割をとっており、乗り換えの利便性を含めて今までより脚光を当て、これらの線区をもっといいものにし、イメージが少しでも上がるような施策をとっていきたい」と語っている。

上から、今後、京葉線に新車両が優先的に投入されるだろうと筆者も予想している。

<京葉線車両の現状>
京葉線用車両の種類・車両数については以下に詳しい。

京葉車両センター所属車両編成表(「千葉総合車両センター」内記事)

205系京葉車両センター編成表(「4号車の5号車寄り」内記事)

209系京葉車両センター編成表(「4号車の5号車寄り」内記事)

E331系京葉車両センター編成表(「4号車の5号車寄り」内記事)

国鉄201系は1979-1985年製造(本稿執筆時点で25-30年経過)、国鉄205系は1984-1993年製造(15-25年経過)だ。かつては省エネ車両だったが、現行車両(209系以降の系列)と比べれば、省エネ性能に劣っている。201系と205系を合わせて、計250両(本稿執筆時点で、205系が10両編成×17本、201系が分割不能な6+4両編成×4本、分割可能な6+4両編成×4本)が所属しているが、武蔵野線、南武線、横浜線よりは編成数が少ない。また、房総各線と比べれば、運用は複雑ではない。更に、一部は旧車両(といっても、比較的経年が短い209系)の転属で賄うことができるので、置き換えが割合簡単に行える。

<概略−新車を投入する理由>
以下に新車投入の理由をまとめる。

【新車投入の理由】 (省エネ対応、バリアフリー対応の詳細については「探索者 2008/11/06」に詳しいのでご参照頂きたい)

<車両置き換えに対する制約とその解決>
車両置き換えをしようとする場合、制約があるので以下に説明する。

2008年現在の車両充当計画(車両の運用サイクル)の都合上、京葉線の車両をやたらと統一することはできない。

(補足、車両充当計画・・・ 鉄道車両は定期的に検査を受ける必要がある(交番検査等)。これを実現するため、鉄道車両の1日の全運用は10程度-数十程度のパターンに分割される。車両は日々、順を追うようにパターンをこなし、全てのパターンをこなしたら最初のパターンに戻って1サイクルするようになっている。なお、1サイクルするまでに数回、車庫に戻るように計画される。これによって、営業運用からいったん外れ、工場(京葉線車両の場合、大宮総合車両センター)へ検査や修繕を受けに行く余裕が作れる)

(備考2、京葉線の車両充当計画については以下の調査結果に詳しい。

港南ターミナル・鉄道ページ(「港南ターミナル・鉄道乗り場」内記事)

京葉線の車両充当計画(車両の運用サイクル)は、3種類のサイクルに大別される。そして、各サイクルで使用車両を分けている。以下の表をご覧いただきたい。
外房線、東金線乗り入れ(分割・併合あり)運用(3パターン)
201系(110km/h走行非対応車)分割可能編成 4本(予備車1本)

当サイクルでは、以下の特徴的な運用がある。

夜の帰宅ラッシュ時に外房線に乗り入れ→6連と4連とに分割して、それぞれ外房線勝浦駅、東金線成東駅を目指して走行→乗り入れ先(勝浦、大網)で停泊→翌日朝に外房線にて、分割された6連と4連を併合→京葉線に乗り入れる朝の通勤快速等の運用をこなす

車庫(京葉車両センター)に戻るまでに最長で2日かかる。

同一形式の6連と4連が必要。現状では110km/h走行非対応の201系を使っているが、対応車両が望ましい。
内房線、外房線乗り入れ(非分割)運用(10パターン)
205系(110km/h走行対応車)12本(予備車2本)

当サイクルでは、以下の特徴的な運用がある。

夜の帰宅ラッシュ時に内房線、外房線に乗り入れ→多数列車が乗り入れ先(君津、上総一ノ宮他)で停泊→翌日、京葉線に乗り入れる朝の通勤快速等の運用をこなす→(この後、車庫に戻るか、もう1日乗り入れを行って車庫に戻る)

車庫(京葉車両センター)に戻るまでに2、3日かかる。

内房線、外房線での110km/h走行に対応した車両が必要。なお、2008/11現在、10連のみ使用している。朝の上り通勤快速は特に混雑が激しい。乗車スペースを狭めないために、10連が望ましい。
京葉線内限定(非分割)運用(10パターン)
以下の各車両を合わせて11本(予備車1本)か?
  • 201系(110km/h走行非対応車)分割不能編成 4本
  • 205系(110km/h走行非対応車)5本
  • 201系(110km/h走行非対応車)分割可能編成 1本(おそらく、4本中営業していない1本を使用)
  • 205系(110km/h走行対応車)1本(おそらく、12本中営業していない1本を使用)

当サイクルの車両は、京葉線内限定で走行する。大半の車両は、営業終了後車庫に戻る。

10連、6+4連のいずれも使用可。110km/h走行対応、非対応のいずれも使用可。

<置き換え予測>
以下に、旧車量を新車両に置き換える予定を予測してみた。筆者の仮説では置き換えを4グループに分けており、各回をグループA〜グループDと名付けている。
(注1、以下の文中に現れる運用番号(51、81等の番号)は「港南ターミナル・鉄道ページ」中記事にあるものを利用しています。なお、この番号はJR東日本が公式に使用しているものです)
(注2、時刻表(特定の駅の発車時刻表ではなく、書籍の時刻表)をお求めになり、置き換えされる運用番号に乗っている列車番号(1154A、1603Yなどの番号)を探してマーカー等で色つけをすると、置き換えされる列車が何時何分に走るのか、直感的に分かりやすく見えてきます。当文書を読むだけでは普通イメージが湧きませんので、この作業をお薦め致します)

−−−グループA−−−−−−−−−−−−−−−
(グループAは、外房線、東金線乗り入れ(分割・併合あり)運用)

<置き換え対象>
201系(分割可能編成) 6+4連×4編成
→E233系 6+4連×4編成

<運用の変化>
81、83、85の運用を置き換え。
3運用のサイクルを3+1本(予備車1本)で回転させる。

−−−グループB−−−−−−−−−−−−−−−
(グループBは、京葉線内限定(非分割)運用)

<置き換え対象>
201系(分割不能編成) 6+4連×2編成
201系(分割不能編成) 10連×2編成
→209系500番台 10連×5編成

205系(110km/h走行非対応車) 10連×5編成
→E233系 10連×6編成

<運用の変化>
51、53、55、57、59、61、63、65、67、95の運用を置き換え(ただし95は平日限定)。
10運用のサイクルを10+1本(予備車1本)で回転させる。

−−−グループC−−−−−−−−−−−−−−−
(グループCは、内房線、外房線乗り入れ(非分割)運用)

<置き換え対象>
205系(110km/h走行対応車) 10連×12編成
→209系500番台 10連×12編成

(総武緩行線に209系500番台 10連×12編成が走っており、置き換えるにはちょうど良い数だ。京葉線の車両置き換えを見越して作ったのではないかと勘ぐってしまう)

<運用の変化>
01、03、05、07、09、11、13、15、17、19の運用を置き換え。
10運用のサイクルを10+2本(予備車2本)で回転させる。

−−−グループD−−−−−−−−−−−−−−−
(グループDは、京葉線内限定運用のうち、土・日・祝日限定の95運用。京葉車両センター出区で運用開始→京葉車両センター入区で運用終了のため、他とは独立した運用にできる)

<置き換え対象>
置き換え対象の旧車は特になし
→E331系 14連×1編成

<運用の変化>
次世代通勤電車であるE331系の試験を営業運用の中で行う。95運用に土・日・祝日限定で入る。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

<置き換えの順番>
グループB(201→209-500)→グループD→グループA+グループB(205→E233)→グループC の順番だろうかと予測している。

・グループB
グループBは更に2グループに分かれる。

1つは201→209-500のグループだ。
本文冒頭でも紹介したが、209系500番台が京葉線用の帯を巻いて、京浜東北線から転属してきた。10連 5本が転属する見込みなので、グループBの201系分割不能編成の置き換えが最良の選択だろう。これによって、グループBのサイクルについて、車両に余裕が生じる(現状ではグループA、グループC用の予備車をグループBに流用せざるを得ないので、使用車両のパターン化がやりにくく、あまりよくない)。更に、209系500番台はグループC用の予備車としても使える(最高速度は110km/h)。

(注・・・2008/12/01から順次、209-500は京葉線での営業運転を開始した。 これに伴い、201系分割不能編成が全て京葉線を離脱した。
【JR東】209系ケヨ32編成運用開始(2008/12/01、「1st-train」中記事)

【JR東】209系ケヨ33編成運用開始(2008/12/02、「1st-train」中記事)

【JR東】201系ケヨ74編成廃車回送(2008/12/04、「1st-train」中記事)

【JR東】201系ケヨ70編成廃車回送(2008/12/11、「1st-train」中記事)

【JR東】209系ケヨ34編成運用開始(2009/01/17、「1st-train」中記事)

【JR東】201系ケヨ71編成廃車回送(2009/01/22、「1st-train」中記事)

【JR東】209系元ウラ82編成TK出場(2009/01/27、「1st-train」中記事。ケヨ31編成になり、2009/01中に営業運転を始めた模様)

【JR東】201系ケヨ72編成廃車回送(2009/02/05、「1st-train」中記事)

もう1つは205→E233のグループだ。
旧車の転属といっても、割合自由に使える旧車はせいぜい209系500番台くらいで、他区からの旧車の転属は面倒になる(209-500は10連×17編成しかない。グループBの一部とグループCの置き換えで使い切るのが最も良いと筆者は考える。これ以外の旧車は205系になってしまい、置き換える意味がなくなる。また、バリアフリー対応改造等が面倒)。グループB用の205系 5本の置き換えには、新車を投入するほうが楽だ。ただし、2007-2009年は、京浜東北線用にE233系1000番台の投入が進行中で、2009年度前半はこれにかかりきりだろう。その後も、E259系(6連 22本、成田エクスプレス用)、E233系2000番台(10連 18本、常磐緩行線(東京メトロ千代田線直通)用)の投入が控えている。京葉線用にはE233系 10連を入れるだろうが、2010年度以降になると考える。(JR東日本の新車投入実績および見込みの詳細については「探索者 2008/11/06」にまとめたのでご参照頂きたい)

・グループD
グループBのうち201系を置き換えることで、予備車の融通が簡単になるので、この後E331系が営業運用に復帰するだろう(E331系は14両・3扉車(ただし、編成長は10両編成と同じ。 車体長は13.4mを基本としており、通常より短い)で、更に連接台車を採用した非常に変則的な車両だ。他の車両とは乗車位置が違うため、視覚障碍者が不便を被るおそれがある。そのため、運用が変則的になることは避けたいはず)。

(注・・・2008/12/23から、E331系は京葉線での営業運転を再開した。2007/03に運用開始したものの、まもなく不具合により離脱。1年強の間が開いて運用復帰したことになる。
【JR東】E331系営業運転復帰(「1st-train」中記事)

(余談だが、E331系は京葉線での試験の後、南武線のラッシュ時間帯用に投入されるのではないかと思う。南武線は年々混雑が増している路線だが、駅ホームを延長することができないため、車両の編成長は6両が限界だ。最近数年は列車本数を増やして混雑に対応している。E331系を投入することで、車端部から扉までの移動距離を短くして乗降性を改善するのではないだろうか。他には、混雑緩和のため6扉車を使用している路線でも導入の可能性がある。埼京線(205系 6扉車 2両)、横浜線(205系 6扉車 1両)が該当する。なお、山手線は可動式ホーム柵設置のために、6扉車を4扉車に置き換える予定だ。個人的に面白いと思うのは鶴見線だ。連接台車は急曲線を持つ区間で有効なので、試験的に投入しても無駄にはならない)

・グループA
グループB用のE233系 10連の投入と並行して、グループA用にE233系 6+4連を入れるだろう。

(6+4連を209-500等で賄うのは、先頭車の不足等があり、難しい。E233系を投入する場合、10連 6本、6+4連 4本となり、必要な編成数は他線区より比較的少なくて済む。武蔵野線、南武線、横浜線の各線を新車で統一するには、より多くの編成数が必要)

(E233系のような新車両は京葉線には投入しやすい。E233系を追加投入して、209系500番台 10連を他線区に転属させることが容易だからだ。例えば、編成を短縮して、京葉線から武蔵野線(8連)、南武線(6連)、川越線(4連)などに転属させることができる。これに対して、逆向きの転属は難しい)

・グループC
(グループCの置き換え予想は、以下の仮説以外にも様々な可能性が考えられるため、他グループよりは確実性に劣ります。あくまでも筆者の仮説として参考程度にお読み下さい)

209系500番台は2013年ころに機器更新を迎えるので、それまでに総武緩行線を走る10連 12編成を京葉線に転属させて、同形式を1カ所にまとめておく。(209系500番台を転属させるには、総武緩行線に代替車両が必要だ。常磐線快速(上野−取手間限定)のE231-0を総武緩行線に転属し、常磐線快速にはE233-3000を投入するかもしれない(2013年以降、常磐線は上野から東北縦貫線を介して東京駅に乗り入れる計画がある。東海道本線と車両を共通化して、相互乗り入れをする可能性もある))現状の10両編成のまま機器更新をして使い続けるもよし、機器更新の上編成を短縮して、武蔵野線他に再転属、京葉線にはE233を追加投入、としてもよい(編成の短縮は、更新作業のコスト削減、およびモーター等の負荷低減による信頼性の向上を見込めるので、JR東日本が実行する可能性は高いと筆者は考える)。

209系の転属に関わる車両動向については以下に詳しい。

209系置き換えの記録(「4号車の5号車寄り」中記事)

<編集後記>
近い将来、京葉線の車両は総入れ替えとなるだろう。京葉線は「京葉中古車センター」と揶揄されるような旧車の宝庫だ(数年前には武蔵野線に103系が多数走っていたし、205系の量産先行車(窓が2段になっている。クハ205-1など、205系のトップナンバーがある)が山手線から京葉線に転属してひっそりと走っている)。今後数年で廃車になりそうな列車が多いので、写真撮影や乗りつぶし等は今のうちをお薦めしたい。筆者は205系の京葉線仕様車(110km/h走行対応車)が個人的に気に入っていて、廃車されるのは忍びない。115系(山梨、長野、群馬、新潟地区に在籍)を211系で置き換えるには数が足りないので、205系にもう一頑張りしていただければ面白い。

<その後の情報>
JR東日本より公式情報が出た。

京葉線に最新型電車を導入(JR東日本プレスリリース)

E233系を250両、2010年夏から投入するとのことだ。両数から予測して、201系、205系、209-500は京葉線から離脱することになる。E331系は引き続き、営業運転の中で試験を行うだろう。試験の予定は3年間とのことなので、2009/01-2011/12の期間は走っていることになる。その後は京葉線に止まるのか、E233を増備して離脱させるのか、何とも分からない。