お薦めの本

最終更新日: 2008/10/27
作成者:しんどうまさゆき

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アンダースロー論
(渡辺俊介著、光文社刊)


千葉ロッテのアンダースロー投手、渡辺俊介の著書。 ピッチャーがマウンドで何を考えているか、 何に悩んでいるか、が詳細に綴られている。 2005年の好調と2006年の不調の原因(pp.64-66、pp.147-151)、 2005年のプレーオフまで隠していた決め球(pp.68)、 手の爪を切るタイミング(pp.102)などの話を読んで、 ピッチャーがとても繊細なことに驚いた。 こういった話は、球場で野球を何年見ても分からない。 ピッチャー本人や、ブルペンキャッチャーなどが語る他に知る術はない。

「僕は一般的に『野球選手に必要な素質』というものを、 ほとんど持ち合わせていません。足も遅いし、バネもない、 運動能力はさほど高くありません。ピッチャーとして、 コントロールも悪かった。中学、高校のころから、 野球選手として見たら、いい部分は全然ありませんでした。 もしオーバースローのピッチャーだったら、たぶん僕の野球は、 高校で終わっています。(略)アンダースローになったおかげで、 いまの自分がある」(pp.215)

千葉マリンスタジアムの前に、選手の手形を集めたモニュメントがある。 渡辺俊介の手形は、他の投手と比べて指の関節一つ分小さい (ピッチャーの手形は、渡辺、藤田、薮田、小林雅英、小野、久保、 小林宏之、清水、セラフィニ、加藤康介、高木晃次、小宮山とあるのでご確認頂きたい)。 私の手と大体同じ大きさだった。 選手名鑑で確かめると、渡辺俊介の体格はロッテの他の ピッチャーとさほど変わらない。手だけが小さいようだ。

身体能力がさほど高くないのにプロスポーツで通用しているのは、 アンダースローがあるからだと渡辺は主張する。 そして、生きた手本が少ない中での試行錯誤を本書にまとめ、 アンダースローの教科書にしようとしている。

この本を読むと、野球観戦で熱くなってしまう人が続出するだろう。 続編として、小野晋吾(千葉ロッテのピッチャー。 打たせて取る投球が得意。三振よりも内野ゴロを量産する。 スライダー・フォークボール全盛の時代に シュートを得意球にする、珍しいピッチャー) のオーバースロー論も執筆頂きたいものだ。