お薦めの本

最終更新日: 2008/10/27
作成者:しんどうまさゆき

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  • 会計のことが面白いほどわかる本 会計の基本の基本編
  • 同 新会計基準の理解編(天野敦之著、中経出版刊)

全てのビジネスマンにとって、会計の知識は必要だという。 ただし、簿記の細かい知識は、覚えてもほとんど役にたたない。 簿記の教科書ではなく、会計の中で本当に必要なこと だけを選んでまとめた、会計入門書だということだ。

私は、読んで一発で気に入った。会社の役割、会計の役割が全体的に分かる。 また、新聞の経済面をすらすら読めるようになってくる。 (ただし「経済のニュースが面白いほど分かる本」も読まれたい) 私は職業訓練で簿記の勉強をやったが、簿記で作る書類 (貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書) の読みとり方は教わらなかった。 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書で何が読みとれるか? それぞれの違いはどのようなものか? この本ではこれを平易に解説してある。 これを知っているか、そうでないかは、 会計(さらには会社活動の全体像)を知っているか、 いないかの決定的な分かれ目になる。 また、簿記の勉強でもこの本は役に立つ。 「理屈のよく分からない仕訳がある」 「減価償却の考え方はすっきりと納得できない」 「貸倒引当金繰入(旧称は貸倒償却。2002年現在の試験では「貸倒引当金繰入」 を使うのが望ましい、とされている)と貸倒引当金とを間違えてしまう」 「未収利息や前払保険料を、貸借対照表と損益計算書のどちらに載せるか分からなくなる」 簿記を一通り勉強した人は、だいたいこのようなトラブルを抱えるだろう (私もそうだった)。従来の簿記教科書では、これに明快な解答を出せていない。 しかし、私はこの本を読んで、トラブルを一挙に解決できた。 今まで習った知識が整然と整理され、 1個の緻密な機械装置になったような感覚がした。 この本は、簿記3級〜2級程度をマスターするための下地となってくれる。 商業高校、経営学部の学生に送ったら喜ばれるだろう。

この本は、学卒未就職者、就職活動間近の学生、新入社員など、 会計のことをまったく知らない人にまず薦めたい。 企業の第一線で働く会計の実務担当も、この本に勝る会計教育はできないと思う。 絵に描いたような完成度だ。今後10年は改訂の必要がないだろう。

さらに驚きなのは、この本の著者だ。 著者はこの本の初版発行当時で26歳だ。公認会計士第3次試験に合格し、 経理のコンサルタントをやっているという。社会人5年目くらいの年齢で、 初心者に易しく、かつ奥が深い教科書を書ける人間は普通いない。 (たとえば、専門用語の定義や、背景知識の説明を 「短い言葉で核心を突く」ようにしている。 基礎の説明を、簡潔で、かつ幅広く応用できるように行うことは、 (左記のように)言うのは簡単だが、ほとんど全ての人にできない) 簿記・会計の教師・講師にはまずゼロだろうし、 実務の知識が豊富な会計担当の従業員、 会社生活が長く、経験豊富な方でも、 この本よりも分かりやすい教え方はできないはずだ。 教育に必要なのは研究者だということを再確認できる。

教育に大事なのは、教師の腕よりも、よくできた 教科書だと私は中学生の時から思っている。こういう、 できのよい教科書を素直に読ませれば、 勉強ができない学生は出ない。 それなのに、教師が自分の言葉で説明をするから、 授業が分からなくなり、学級崩壊が起きる。 知的教育で教師がするべきことは、 教科書を主役にして人間を引っ込ませることだ。