不定期記事「探索者」

作成日:2014/09/12
最終更新日: 2016/07/23
作成者:しんどうまさゆき

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手指を使った数の数え方と、10進法、12進法、20進法について考察したい。

Finger counting(Wikipedia:en)

上ページで「指を使う数えかた」をまとめている。内容を抜粋すると、日本、現代の英語圏、そしてヨーロッパ(ロシア、東欧を含む)では「指の数」型で数えている。その一方、アジアに多い方式として「指の節」型がある。

<「指の節」型の12進法>
ヒマラヤの満月と十二進法(NUE 11号-1、追手門学院大学教授 西川善朗)

「指の節」型の日本語での解説は上ページに詳しい。数の数え方には「指の数」型と「指の節」型が大昔からあり、「指の節」型は12進法の起源と考えられるという。

インド式算数の基本!?「インド式数え方」(MAMApicks 2012/10/31 12:30)

インドの幼稚園では実際に、指の節を使って12まで数える教育を実施している。上サイトでその様子が分かる。

英語の数体系(「思索の遊び場」中記事)

上ページの末尾に載っているが「12 の倍数には商業用または歴史上の単語がある」。ダース、グロス、グレートグロスがそれだ。英語ではそれぞれ、dozen, gross, great gross と言う。

<「指の節」型の10進法も可能>
以上が「指の節」型の12進法だった。ところで「指の節」型は10進法にも使える。小指から中指までの節9つを片手の親指で指せばよい。ベトナムはこの方式を使う(出展、かんたん旅会話 9 ベトナム語 p.21(昭文社刊))。反対の手で10の位を数えることも理論上できるので、最大 10×10=100 までを特別な道具なしで数えることができる(片手の指の節は9個だから、9×9=81ではないか、といぶかる人は、実際に数えて確認してほしい)。

12進法の場合も、反対側の手で「12の位」を数えることが可能になる(12、24、36、48、・・・、120、132、144)。最大 12×12=144 までを数えることができる。従って、前述の1グロス(=12ダース=144個)は「指の節」型の12進法で数えられる。ダース売りの商品はこの方式で数えているかもしれない。

(なお余談だが、10進法と12進法の数え方には微妙な違いがある。12進法では片手で12まで数えられるのに対して、10進法では片手で9までだ。10を数えるには指の節が足りない)

<「指の節」型の20進法に応用する>
突然だが、ここで話題を20進法に移そう。「指の節」型の10進法では、片手で9までを数えた。ここで、10を数えるのに反対の手ではなく、人差し指を折り曲げたらどうか。小指から中指を再度使い、11から19までを数えられないだろうか。「指の節」型は片手での20進法にも使えそうだ。20になったらいよいよ片手に余るので、反対の手の節で20を数える。一方の手で1の位、もう一方の手で20の位を数え、両手を使い切ったとき、最大 20×20=400 までを数えることができる。

20進法に使い道はあるのか。年月の計算には有効だろう。地域を問わず、400までを特別な道具なしで誰でも数える必要があったのではないか。現代人が主に使用する太陽暦では、1年=365〜366日だ。しかし、暦法には太陰暦もある。

太陰暦(Wikipedia)

上ページの内容を抜粋する。純太陰暦では、1年=約354日だ(12朔望月。ただし季節とは無関係に年月がめぐる)。太陰太陽暦では1年=約354日〜約384日だ(12〜13朔望月。3年に1度閏月を設けて、大まかにだが季節のずれを修正する)。1年の日数は短期的な周期で変わり、多いときは400日近くになりうる。

純太陰暦も太陰太陽暦も、月の満ち欠けを観測すれば使える暦法なので、太陽暦の作成ほど高度な教養・技術はいらない。しかし、季節の循環を把握しにくい。この短所を克服するためには、太陽暦を採用するか、あるいは20進法で400まで数えて季節を予測する必要性が出てくるだろう。農耕、特に種まきの時期を見計らうためには、季節の循環を把握することは一大事だ。

また、20進法による1年の日数計算とは独立して、12朔望月を1周期とする12進法も必要になってくる。潮の満ち引きは月の満ち欠けと連動しているので、漁業には太陰暦が便利だからだ。「指の節」型の数え方は手指の操作方法に共通点があるため、10進法、12進法、20進法の3方式をまるで同一の方法であるかのように使える(3つを使い分けている感覚、あるいは「境目感」がぼやけている)。10進法、12進法、20進法の3方式は大きな1グループに属しており、渾然一体だとも言える。

(備考、太陰暦と太陽暦の長所・短所について、以下ページを参照した。
暦 2.6 それぞれの暦法の長所・短所(Wikipedia)

(余談だが、指の節目と指先を使うと、16進法で数えられる。最大 16×16=256 までを数えられる。16進法も前述の3方式の変種と言うことができる。なお以下ページで図解を確認できる。
Hexadecimal 1.3 Verbal and digital representations(Wikipedia:en)

「指の節」型の20進法は、私の想像だ。これを使っている人がいるかどうか分からないし、歴史資料もインターネットを軽く検索した限りでは見つけられていない。しかし、この方式は便利だ。「20進法は手足の指の数から取られている」という。20進法を思いついた元はそれかもしれないが、実際に数を数えるときに足の指は使いにくいだろう。20進法を使った民族は世界の各地にいるが、いくつかの民族は「指の節」型で数えたのではないだろうか。

二十進法(Wikipedia)

上ページによると、世界的に見て20進法は決して珍しい数体系ではない。マヤ文明(およびその子孫が使うナワトル語)、アイヌ語、バスク語、ケルト諸語、フランス語、グルジア語などの数体系(命数法)には20進法がある(ただし、純粋な20進法の言語もあれば、10進法と混合している言語もある)。20進法は世界各地に点在している数体系である。特に、かつて日本にも住んでいたというアイヌ人が持っていたのは驚くべき点だ。

(備考、命数法とは「数詞を用いて数を表す命数(めいすう)の方法」。詳しくは以下ページを参照。
命数法(Wikipedia)

<「指の節」型の数え上げとインド・ヨーロッパ語族の数体系>
本節では「指の節」型の数え上げが、10進法、12進法、20進法を渾然一体に扱えることを述べた。実はこの「渾然一体」が、ヨーロッパの言語の数詞(インド・ヨーロッパ語族諸語の数体系)に大きく影響を与えたのではないかと筆者は考えている。この点を次節で考察したい。

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