不定期記事「探索者」
作成日:2010/10/17
最終更新日:
2011/07/10
作成者:しんどうまさゆき
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今回は、京葉線の車両置き換えに伴う動きを予測してみたい。
(注1、当記事は筆者による予測であり、JR東日本の公式発表ではありません。また、鉄道の運用は刻々と変化するものであり、当文書及びリンク先の情報が、最新の状況を常に反映している保証はありません。当文書およびリンク先での情報を利用したことにより、何らかの損害を被ったとしても、筆者は一切の責任を負いません)
(注2、以下では鉄道車両の形式等の専門用語が出てきます(例、205系量産先行車)。用語の詳細については
wikipedia に詳しく説明されていますのでご参照ください)
2010/07/01から、京葉線では新車のE233-5000が運転を開始した。2011/10ころを目処に、209-500、205系、201系は京葉線から姿を消す見込みだ。前回の予告通り、旧車の今後について予想を述べたい。
とは言うものの、他サイトにて上記記事のように具体的な予想が既に出ている。国電総研の予想は公式情報ではないものの、継続的に精度の高い情報を出しているので、京葉車両センターの205系の顛末はおおよそ上記サイトの記事どおりになるだろう。
(補足、JR東日本の車両運用プロジェクトが公表された(鉄道ファン 2010/12号)。同誌ではおなじみの、JR東日本の白土裕之氏による記事で、京葉線の車両置き換えについての記事もある(pp.81-83)。)
内容はほぼ同じだが、以下に私の予想を含めてまとめてみる。
- 201系→廃車
- 205系(110km走行未対応車)→廃車(京葉線205系さよならイベント用に残しておき、廃車は最後になるかも)
- 205系(110km走行対応車)→10本を4両化のうえ小山車両センター(日光線・東北本線黒磯口での運用)へ転属
- 205系(武蔵野線用・界磁添加励磁制御車)→4本を6両化のうえ小山車両センター(日光線・東北本線黒磯口での運用)へ転属
- 209-500→4本を8両化のうえ武蔵野線へ転属(一部は既に転属済)
- E331系→不明(営業運転を兼ねた試験が2010年度で終わる予定。継続して使用するか、廃車のいずれかになりそう)
国電総研の予想で面白いのは、東北本線黒磯口の運用に205系が充当されることだ。これにより、一部車両が余剰となり、廃車になったり運用の見直しが発生する。
上記記事によると、変則的な車両運用が若干ある。東北本線(宇都宮線)では、大半の列車にE231-1000、3000(小山車両センター)あるいは211-1000、3000(高崎車両センター)を使用している。その中でわずかに、107系と115系が使われている。以下にまとめてみる(注、列車番号は2010/10/17現在のもの。以後のダイヤ改正によっては、列車番号の変更や行路の廃止等がありうる)。
車両形式 | 編成構成 | 列車方向 | 車両所属 | 列車番号(東北本線内) |
107系 | 2+2+2連 | 下り | 小山車(注3) | 1823M |
107系 | 2+2連 | 下り | 高崎車(両毛線からの直通) | 425M |
107系 | 2+2連 | 上り | 高崎車(両毛線への直通) | 448M |
115系 | 4連 | 下り | 高崎車(両毛線からの直通) | 459M |
115系 | 4連 | 上り | 高崎車(両毛線への直通) | 472M |
(注3、小山車両センターから日光線への送り込みを兼ねた営業列車と思われる。逆方向の営業列車がないため、日光線から小山車両センターへの取り込みは、回送列車として設定されているのではないか)
以上から、京葉車両センターの205系を小山に転属させる理由が少々見えてくる。以下に列挙する。
- 車両不足による上記の変則運用を解消するため。現状では小山車(107系、E231-1000、3000)で東北本線、および日光線の全運用を賄えず、高崎車を借用しているため、苦しまぎれな運用になっている。車両数の調整によって、小山、高崎とも運用がしやすくなる。
- バリアフリー対応を進めたい。栃木県内の電車を4扉車に統一すると、視覚障碍者や車椅子使用者が乗降しやすい(今後、3扉車の211系は4扉車のE233系に置き換わる見込み。関東地方では相当な閑散区間となった内房線、外房線末端区間でも、209-2000が走行している。209-2000は、長時間の停車に対応して、2010/08から扉の3/4閉機能を使用開始した)。
- 日光線の短距離かつ急勾配(20‰)に適した車両を使用したい。京葉・武蔵野205系は京葉線地下トンネルの急勾配(33‰)の走行実績がある。現状で6M4T(電動車:付随車=6:4の意)の10連から編成を短縮しても、2M2Tの4連や4M2Tの6連になり、MT比の極端な低下はないため、山岳路線の使用にも対応可能(211系5連は2M3Tで、急勾配に弱いという。編成短縮すると2M1Tの3連になり、107系の2+2連を多用する日光線で使用すれば乗車定員に難が出る。なお、211系の高崎車は信越本線、吾妻線、上越線(上越線では急勾配区間に限る)には入線しない(2010年現在))。
- 燃料電池ハイブリッド車の営業運転を兼ねた試験を行ないたい(出展、国電総研スペシャル2009)。このためには車両と地上設備の変更が必要。距離の短い日光線、および東北本線(宇都宮−黒磯)を試験台にして、車両も旧車の改造で対応したい(転属する205系の一部を使用か)。ハイブリッド車の使用機会は小山周辺には多い。東北本線(黒磯駅構内の交直切替地点をまたぐ際に便利)、水戸線(小山−小田林、同じく交直切替地点をまたぐ)、烏山線(宇都宮−宝積寺−烏山、宇都宮−宝積寺以外は非電化路線で短距離)の3路線で有効だろう。
話が変わるが、以上で述べた栃木の宇都宮以北とよく似た状況がある。群馬の高崎以北だ。
高崎以北は使用車両が多彩だ。115系、107系、211系、E231系、185系がある。3扉車と4扉車が入り交じるだけでなく、ロングシート車とセミクロスシート車が混ざっている(115系と211-1000はセミクロスシート車。107系と211-3000はロングシート車)。通勤ラッシュを捌くのに、相当な不便があるはずだ(例えば、両毛線は単線だが、乗客数は内房線、外房線の単線区間よりもはるかに多い。車両の立ちスペースが不統一なので、混雑への対応が難しくなる)。
(余談だが、1990年代の房総ローカル各線には113系、E217系、205系、103系、183系、255系が入り乱れて走っていた。千葉駅の扉位置表示は煩雑を極め、2010年現在もなお、2扉、3扉、4扉の乗車札は隙間がないほど頭上に吊られている。209-2000が投入されてから、房総ローカルの各駅停車は立ち乗りスペースが増え、短編成でも短距離乗車なら快適になった)
今後、高崎車両センターにはE233系が投入され、211系が置き換えられる予定だ(2013年に開業する東北縦貫線に急勾配区間ができるため、211系では対応できないという)。しかし、置き換えは211系にとどまらず、115系や107系もE233系で置き換えてしまうのではないかと私は最近考えている。根拠を以下にまとめてみる。
- 急勾配に対応した短編成の車両が旧車に足りない(2011-2013の間、高崎にE233系を投入し、211系を玉撞転属するため、他地区へのE233系投入による205系の玉撞転属は難しい。211系の短編成化で一応は115系、107系を置き換え可能だが、後述する座席の統一等の理由がからむため、E233系の3連、4連を投入して115系、107系を直接置き換えるほうが手間がない)
- 座席を統一したい(211系にロングシート車とセミクロスシート車が混在しており、混雑を捌きにくい。座席の改造は一応可能)
- 4扉車に統一したい(バリアフリー対応のため。詳細は前述)
- 同一形式をまとめて配置し、保守を容易にしたい(高崎、小山、国府津にE231系、E233系が集中配置され、国鉄型の形式(115系、107系)がなくなる。関東地方の車両が205系と209系以降の新系列車両に統一されるので、東京総合車両センター、大宮総合車両センターでの保守が簡素化できる)
- 新津車両製作所の生産能力の都合。新津は中間車用と先頭車用の製造ラインを持っている(鉄道ファン2010/11号 p.76)。両ラインを効率よく動かすためには、中間車と先頭車との製造割合が偏らないのが理想(私の想像にすぎないが、中間車:先頭車=2:1で製造するのではないか)。2011-2013年にはE233-3000(10連(のうちグリーン車を除く8両)と5連か)とE129系(2連)を並行製造するという国電総研の予想にも無理がない。余談だが、E231-1000とE531系には新津、東急、川重の各メーカー製が混在している。2階建てグリーン車が東急・川重製、普通車が新津製、といった編成中での混在もある。基本的に東急・川重が製造し、新津は補助的に製造したように見える。高崎以北にE233系の3連、4連を投入するならば、東急に任せるかもしれない。
以上を踏まえて、JR東日本管内の115系、107系を中心とした車両置き換えについて、全体的な予想を以下にまとめてみた(予想にあたり、JR東日本、およびしなの鉄道の所属車両数について以下を参照した。
編成表のページ(支社所属別)(「知識の倉」中記事))。
国電総研2010スペシャルの公開前は、E233系を京葉線、武蔵野線、埼京線に投入し、余剰となった205系を改造の上、高崎や小山に転属させるのではないかと考えていたが、2010/10現在の車両の疎開、転属工事、国電総研2010の予想等を鑑みて、上記にまとめた予想がより現実的だと考えている。
当記事の予想では、同一形式を集約するようにしてみた。特に、長野総合、松本、豊田(長野、山梨地区用の車両)を重視した。その理由は2014年の北陸新幹線開業にある。長野新幹線が延伸され、2014年には本来の名称である北陸新幹線へと様変わりする。これに伴い、信越本線の長野−直江津間が経営分離され、おそらくはしなの鉄道に移管される。しなの鉄道は信越本線の軽井沢−篠ノ井間を移管されて(これも長野新幹線開業に伴う経営移管)1997年に開業し、JR東日本の資産を受け継いだ(2010年現在、車両は115系と165系を使用している。165系は経年が相当長いので、115系を譲受して早急に置き換えたいはず)。新幹線と並行する以上、経営が楽ではないので、JR東日本と足並みを揃える必要がある。このため、前記の3つの車両センターは、中央本線(立川−塩尻)、篠ノ井線(塩尻−篠ノ井)、信越本線(篠ノ井−長野−直江津)用の列車に加え、JR東日本への乗り入れが増えるしなの鉄道用の車両にも配慮したいところだろう。しなの鉄道としては、JRに車両型式を絞り込んでもらいたいはずだ。JRからの乗り入れ車両の統一化、JRからの譲渡車両の統一化、譲渡後の車両保守および運転士教育の簡便化が図られるので、費用低減が期待できる。
<編集後記>
制作にあたり、列車運用情報等の資料の利用に快諾くださいました方々に感謝を申し上げます。
最近、中央線の201系が引退走行をした。
常磐線各駅停車用のE233-2000の配備も進んでおり、間もなく203系の廃車が始まるだろう。
国鉄時代に製造された車両は、JR東日本管内からの淘汰が進んでいる(電車の淘汰は急速だろうが、キハ40系の淘汰はあと10年程度かかりそうだ)。鉄道車両の耐用年数は30〜40年が相場なので、2000年代〜2010年代は、車両の大交代時代となっている。2010年を振り返ると、テレビで鉄道車両のニュースを見る機会が多かったように感じる。書店では家族で鉄道趣味を楽しむ雑誌まで現れた。2007/10の鉄道博物館開館以降、ちょっとした鉄道ブームが起こっているようだ。
旧車は大半が廃車になってしまうが、一部は地方私鉄に譲渡される(輸出される事例もある)。上記記事はその一例で、成田エクスプレスを務めた253系の一部は、長野電鉄で第二の人生を送る予定だ(2010/10現在、東急車輌製造(逗子)にて転用改造中)。今後、小田急10000形(ロマンスカーHiSE)との列車交換も起こりうるので、今までは不可能だった、両者を一度に収める写真撮影ができるかもしれない。画一的になりつつある首都圏に対して、地方私鉄は今後十数年、面白い風景を見せてくれそうだ。鉄道各社が公式の広報資料として、「世界の車窓から」を真似てニコニコ動画などで映像を公開すると面白いだろう。